覚醒する時代

書店に行くと精神世界の書物が沢山あります
その中でルドルフ・シュタイナーの本がかなりの数で訳されています


日本にシュタイナー思想を本格的に紹介したのは
当時、鎌倉の長谷に居を構えていた高橋巌さんでした
まだ精神世界の本が一般的になる前の頃です


高橋さんは元々、慶応大学の美学の教授でしたが、シュタイナー思想の深淵に触れ
これを霊性の枯渇している現代に何とか伝えようと教授職を辞して
シュタイナー研究をライフワークとされました


その鎌倉の高橋巌さん宅に訪問しながら
原理の概略や堕落論、摂理の同時性を説明すると大変関心を持たれ
キリスト教の隠された真髄を共に研究しましょうと何度も自宅の勉強会に誘われたのです


残念なことに、献身者は一つのところに落ち着く暇もなく、暫くすると海外宣教の指令がでると、日本では住所不定となり、以来、長く海外で生活することになってしまいました
そんなわけで、日本の精神世界を先駆けて主導する会には参加することが出来ませんでした


高橋さんの勉強会にはシュタイナーの教育論に関心があった子安美知子氏
大学で建築学を教えていた上松祐二教授、舞踏家の笠井叡氏や音楽評論家の間章氏
後に多くのシュタイナー関連の翻訳本を出版する密教を極めた西川降範氏を中心に
月一で会合を持たれていたようです


シュタイナー思想の核心は知識を蓄積することだけではなく
言葉の背後に息づく見えない霊性を如何にして人間は共有できるかと言うことでした


人間存在の故郷は霊界にあり、人間は誰もが霊的本質を持っているので、それを如何に育てるかが重要だ。またあらゆる共同体はその見えない霊性を基軸にして社会を作っている。宗教に於けるシャーマンや祭司長はその繋がりを纏める中心的役割を果たしてきた」


霊性の大切さを主張したシュタイナーの神秘思想は現象界に現れる事物の本質に対して
如何にして霊的感覚を開発し、人間の魂の中に失われた神を発見しようとする運動だともいえます。高橋さんはそれを「キリスト衝動」と呼び、東洋の「如来衝動」と共時性を持つ
人間の本質的な霊的な故郷回帰への源泉だと位置づけています


こうした個的体験を称揚する、似たような神秘思想は
正統な教会の語る神学からは当然のように排斥されてきました
しかし隠されてきた衝動はヨーロッパの底流に芸術・文化として
無意識のように脈々と流れていたのです
中世キリスト教会の腐敗と堕落が表面化するとこの衝動は
芸術家の感性に照応するようにして一気に表に現れたのです


それが近代においては、ロマン主義、象徴主義、ダダイズム、シュールリアリズムとして
絵画や文学、音楽や哲学など西欧の精神史に今でも大きな影響を与えています


高橋さんが統一運動を日本の霊的系譜の上にどのように位置付けられたのかは
今となっては解りませんが、当時、吹き荒れていた唯物史観に根差した学生運動に
日本の霊性の危機を感じ取り、西洋と東洋を融合する統一する思想を
どこかに求めていたことだけは確かでした


現代人に隠されている最も大きな課題は
現象世界の背後に霊界があることを実感できないことにあります


「緑、豊かな樹木の背後を支える霊的なものをどのようにして感じ取っていくのか
肉体で感じる五感に重なるように、霊人体の霊的五感をどのように育てていくのか
真理とは知的認識だけではなく、霊的認識がより重要なのです」


イエスは聖霊によって身籠ったと信じるキリスト教徒に対して
「そんな夢みたいな話で人は生まれるわけはない」と喝破した統一信徒が
無形なる霊である天使がどのようにして有形の肉体を持つアダムとエバを教育し
育てたのかが説明できないのです。


シャーマンや霊能者の指示に従う清平の役事は霊性の停滞を象徴しています
時代は人間一人ひとりの霊的覚醒を促し、新しい人間の誕生を予感させているからです
原理も堕落論や再臨論を含めて、新たな衣装を着て、より事実に即して科学的に研究される必要があります

真理とは時代の知性に合わせて明確にならなければなりません
微細な霊的五感を開発することによって、歴史の背後に隠されてきた秘密が
明らかになる日も遠くないはずです

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