統一神韓国、統一コリア

朝鮮半島統一に関してこれまで何度も学識者や政治家を招待した会議やフォーラムが
開催された。最近主催されたGPFの会議にオンラインで参加した印象である。


各国の有識者の発表するメッセージはそれぞれのテーマ別になっているが
基本は南北統一が北東アジアの安全保障にどのような影響を及ぼすのかが
最大の関心事であるように思えた


例えば日本を含めて各国の学識者の見解の中には核の廃絶を履行しないまま
南北が統一されれば、北東アジア諸国にとっては深刻な軍事的脅威だけが
齎される可能性が高く、早急な統一を危惧する意見が目立った


一方、米国からの有識者は自由と民主主義の体制が統一後に
どのように維持されるのか、また背後にいる中国やロシアの目論見は何か
加えて自国に影響が出る大陸間弾道弾の開発を極度に警戒しているように思えた


発表ではトランプ・金正恩会談がデッドロックに陥ったのは
南北統一が民族の精神性や価値観を抜きにして
核の廃棄をメインに強調し過ぎた為だと指摘し
それが出来れば北の体制を保障するようなことまで示唆したことも問題の要因に挙げていた


学術者会議やフォーラムでの様々な意見や提案を聞きながらいつも思うのは
それぞれの研究分野の発表には頷くところも多々あるのだが
南北統一への価値観の共有をどのようにして実現していくのかという
より本質的な問題に関しては具体案が提示できていないように思える


発表の中に韓国民の60%~70%は南北統一にあまり関心が無いと言う統計が
示されたが、「国民の大多数が望まない南北統一とは何か」と改めて考えさせられた


国のかたちや価値観の共有と言った民族統一の基本的なビジョンが
米朝の数回のトップ会談で決定できるものでもなく、当然、討議が継続する必要があったのだが、南北首脳の思惑がすれ違ったのか、討議できる象徴となる建物が会談後に爆破されてしまうという事態になってしまった


南北統一と言う国の統治システムをどのように構想するのか?
独裁政治と民主政治の統合をどのように解決していくのか?


今回も多くの提案や議論がなされるが識者の発表には
それぞれの国の国益が散見されることが多く
南北統一が平和裡に履行されるにはまだまだ時間がかかると思われた


一方、旧家庭連合では各国の首脳を招待して平和頂上サミットやシンクタンク会議等を開催してトランプ前大統領をはじめとして、政権を担っていたペンス氏やポンぺオ氏、また日本からは安倍前首相もメッセージを送っている
加えてカンボジアの現職のフン・セン大統領は南北統一に関する事務局を自国に設置し
具体的な調整役として自らが議長に就任している


発表によると議長名で世界各国の首脳を招待して平和頂上サミットを朝鮮半島で実現するビジョンを掲げているが、この事務局がどのような位置付けになるのか、当事国である北朝鮮首脳と韓国政府の政治判断が待たれる


民族の統一とは価値観の共有が出来るかどうかが鍵を握っていると述べたが
問題は北の共産主義的主体思想をどのように抱合していくかと言うことになるだろう
統一思想的に表現すれば金一族の上に神の主権をどのようにしたら立てられるか
と言うことなのだろうが、サミットを開催すれば思想が解決されると言う
簡単なことではないことだけは確かだ


自由と民主主義は意見の相違を認めながらも多数決によって政策を決定する
このシステムが機能しない国が中国であり、北朝鮮であるとすれば
価値の共有に至るプロセスが簡単ではないことが分かる


中国は一国二制度と言う便宜上の過渡的体制を提案して香港を英国から
返還させたが、結果は自由と民主主義の中で生きて来た香港人の価値観を
共産主義の価値観に適応させることは不可能だったと言うことを証明してしまった
民主化を継続しようとした香港人に対して最後は力による強硬手段で排除したからだ
またこのことによって、共産党中国の本音を世界に示す結果となってしまった


価値観を統一する為の方法が中国では力だと言うことを眼のあたりにした台湾は
一国二制度の欺瞞に目が覚めたのか、蔡英文総統は中国の軍事的脅威に対しては
徹底的に闘うことを国民に公言するようになってしまったことも皮肉なことだ


金王朝という世襲制を取る疑似宗教のような北朝鮮の独裁国家に
自由と民主主義の価値観を提示して平和サミットを開催すれば南北統一が実現できるほど
甘くないことは米軍が撤退するや否や瞬く間に軍事力によってタリバンが政権を奪還した
アフガンの事例にもみることが出来よう


統一コリア、統一神韓国が実現すれば神の摂理が終了し、
世界の模範国家になると言うのはまだ遠い話のように聞こえる


顧みれば統一運動は「為に生きる」という価値観、精神性を韓国に根付かせる為に
伝道、布教活動をしてきたのだが、半世紀以上にわたる活動によって
韓民族は世界に誇れるような精神性を確立できたのだろうか?


教義では「旧約、新約のレベルを超え、我等こそ成約であり、神の下に人類一家族になる愛の完成のレベルに生きている」と言うのだが、理想と現実が融合していない
新約の「許す愛」さえも身に付けていない恨のレベルを超えていない民族が
南北統一によって「世界の模範国家になれる」と言う実体のない思いだけが
空回りしているように見える


独立や統一を決定するものはその願望を担う精神性にあることは言うまでもない
その精神が韓国由来の神話からきて、自分たちは選ばれた民だと言うのは良いとしても
大切なことはその精神性を本当に有しているかどうかが問われている


南北共に反日主義の価値観を共有し、常に謝罪と賠償を求めるあり方にたいして
許しと愛を主張し、韓国内で立ち上がって犠牲になる者が一人もいない
愛の統一運動とは何か?と言うことになってしまう。
恨の精神で南北が統一したとするならば朝鮮半島は平和どころか
核兵器を保有した軍事大国の出現となるかも知れないという
日本や米国、近隣諸国の学識者が懸念するのも頷けるところだ。


現に今年の10月10日の党創建記念日の開幕演説で金委員長はこう述べている。
「南朝鮮は我々の武力(北朝鮮軍)が相手にする対象ではない。我々は決して南朝鮮を狙って国防力を強化するのではない」と語り「この地で同族間で武装を使用するぞっとするような歴史は二度と繰り返してはならない」と強調している。


ならば核兵器を保有する独裁国家が相手とする国はどこなのか?


頂上サミットが成功しても、南と北の価値観が違うこと
その価値観の相違は中国や北朝鮮の共産主義思想と
米国・韓国・日本の共有する自由民主主義思想との対立でもあろう


中国の覇権膨張主義が北東アジア全体の問題へと拡大し
南シナ海や台湾に対する中国の武力による脅しは日を追うごとに深刻さを増している
衆議院選挙の告示と同時にミサイルを飛ばす北朝鮮。
日本の津軽海峡を通り抜け、日本の沿岸部を威嚇して航行する中露の艦隊。
中国の軍事力を背景にした覇権主義、核を持った北朝鮮。北方領土を軍事拠点にしようとするロシア。


まさに気が付けば北東アジアは無防備な火薬庫になってしまった
日本や米国、豪州、インド、英国がオークスやクワッドで本格的な同盟関係を結び始めたのは脅威が容易なる事態になってきているからだ


フォーラムやサミットの報告を聞きながら、有頂天になる前に南北問題とは
まさに民主主義と共産主義の対立が根底にあることを忘れてはならない
武力による台湾侵攻は韓国においても日本においても
対岸の火事では済まされない状況になってきつつある


統一コリア、統一神韓国を平和的に実現しようとする努力は認めても
力による脅威に対しては少なくとも韓国は民主主義陣営との結束や同盟関係には
より積極的に参加すべきであり、もっと言えば朝鮮半島の統一だけに関心を持つのではなく、より大きな東アジア全体の自由な平和や繁栄を戦略の中心に位置づけるべきであろう

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