統一運動の検証の必要性

「理想の家庭から氏族、民族、国家、そしてその基台の上に理想世界が来るのです」と
何度も聞かされてはいるものの、どうにも現実感がないのは
その目指す理想世界が明確でないからです


最も考えられるのは古代に於ける祭政一致の神権政治なのでしょうか
ヨーロッパにおける王権は神から直接授けられたものとして
国民は臣民として絶対服従する義務があるという
「王権神授説」に代表される君主制があります


文師の発言にはそうした君主制を思わせるような言葉がたびたび出てきます
王族圏や皇族圏という表現や実際に王冠を被る儀式はその最たる例です


中世ヨーロッパにおいては国権と教権とが結びついた時
多くの問題が生じました
それはその宗教以外の信教の自由は権力によって否定され
決められた国教以外は異端として処罰されたからです


このため多くの犠牲者がうまれ、その結果
宗教戦争にまで発展し分裂と闘争が何度も繰り返えされました


「国王は君臨すれども統治せず」と言う近代における政教分離の体制は
こうした宗教の血みどろの権力闘争が背景にあるからです


統一運動にも韓国を中心とした世界王国を目指しているかのような
文夫妻の血統圏を中心とした位階制(ハイラルキー)の教えがあります


血縁関係を最優先とする文師は嘗て12人の子供を産むことにこだわりました
ヤコブ路程を通してイスラエル部族の元型となる12部族を
再構築しようとしたのでしょうか
ご自身の12名の子女を12支派のモデルとして
世界体制を構築しようとしたように見えます


祝福家庭を文家の12人の子女に振り分けたこの血統を中心とする
12支派による構想は今ではどこかに消えてしまったのか
誰も触れようとしません


価値の基軸を血縁関係に置き統治する祭政一致の問題点は
その人物に能力があるなしは二義的になるという危険性が隠されています


文家の仁進様がアメリカのトップに指名された時も
実際に彼女に特別な管理能力や手腕があったからではなく
文師の子供であるというだけで決定されたのでしょう


トップに立った仁進様の非道徳的行為によって
その人事は脆くも壊れてしまいました
其ればかりか多くの信徒が躓いてしまい
組織自体が崩壊してしまうようになってしまいました


原理の教義では真の父母を中心とした真の家庭は「罪の影すら見えない」ことが
教義の正統性を裏付けるはずでしたが、ものの見事に失敗に終わってしまいました


血統に重きを置く世襲制は歴史の中に数多く見いだすことが出来ます
現在の北朝鮮も共産主義国家と言うより寧ろ世襲制による絶対君主制に近い
金王朝と呼んだほうが的確かも知れません


全ての特権的地位に自分の子供や親族を配置して統治することの弊害は
強権的な独裁者をうみ不服従者は破門や粛清の対象となる可能性があるのは
統一家でも金王朝でも程度の差こそ違え、似たようなものです


文師は経済学者ではありませんでした
従ってどれ程、深い道徳心があっても
事業手腕には長けていないので会社経営は殆ど失敗の連続でした


また政治においても統班撃破として韓国の総選挙に
幹部を擁立しましたが誰一人として当選できませんでした
郭先生が大統領選挙に当選すれば理想国家が出来る程
国の政権運営はたやすいものではないはずです


プロイセンの王フリードリッヒ二世は啓蒙専制君主として有名ですが
「君主は人民の主人であるどころか国家第一の下僕に過ぎない」といいました
それは君主たるものは王宮の奥の院から指令や指示を出すだけではなく
国家の為に先頭に立って尽くす模範者になれと言うことです


統一運動が停滞しているのは財を吸い上げて王宮の権威を
世界に見せることばかりに重きを置いてきたからでしょう
宮殿建設を含めて大会や行事に関わる一切の費用や準備をした
一般信徒の縁の下の力がそれらを可能とさせたのにも拘らず
そのことに対しては殆ど語られたことはありません


本物の父母とは縁の下の努力に心から感謝する人のことを
言うのではないのでしょうか?
苦労し汗を流して親の為に家を建ててくれた子供がいたとすれば
親はその家を自分が立てたとは決して言いません
ましてやそこにふんぞり返って料理人や召使を何人も抱えて
贅沢をするとなれば論外でしょう


真の家庭の迷走は君臨と統治を混同してしまい
権力の集中を世襲的な自分の血統の上に図ったところに
問題が生じたのではないのでしょうか?


英国のロイヤルファミリーも日本の天皇家もここまでの体制を築くには
右顧左眄の歴史的なプロセスがありました


国家は権力の集中によって成り立っています
近代法ではその権力の集中を分散するために三権分立が提唱されました
また代議制によって国民が自らの首長や首相を選ぶことが出来るのが
他ならぬ民主主義です
現代では民主主義が自由を保障し人間の多様性を活用できる唯一の制度となっています


神の創造しようとする理想世界がどのような世界なのかいまだ未知数ですが
上から自動的に来るものではないと言うことだけは確かでしょう


メシアとは万能人間のことではなく
愛における勝利者として位置付ければ運動の方向性が明確になります
理想世界は一人ひとりがその愛の思想を引き継いで
あなたもメシアとなってそれぞれの英知を結集して築いていけるからです


堕落のない創造原理から見れば人類には
たった一つの血統だけがあることになります
養子も庶子もなく全ての人間は一人残らず神の実子なのです
またそこには王族とか皇族といった
直系だ、傍系だという分かりにくい言葉もありません


神がアダムとエバに与えようとしたものは愛の相続です
愛は君臨して人間を下僕のように支配したり
ましてや優劣を競うものではないはずです


ましてや王冠を被ってその権威を人に見せるものでもなく
王冠があるとすれば愛の王冠として心の中にそっとしまっておけばよいのです


統一運動の今までの軌跡をもう一度それぞれが検証し
良否を客観的に見つめなおすことが
今与えられている喫緊の課題なのでしょう

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