素晴らしきかな、人生!

1946年に制作された古いアメリカ映画です
この映画はアメリカの映画協会が選んだ「感動の映画ベスト100」で一位を取り
日本の黒澤明監督が推奨した100選名画の中にも取り上げられていました


舞台は1945年戦争が終わった年のクリスマスイブ
ニューヨーク州のとある町で大金を紛失してしまった主人公のジョージは
「自分など生まれてこなければよかった」
という絶望的な思いに陥って自殺を図ろうとします


そこに天使が現れて「それでは望み通りにしてあげよう」と
天使は彼が生まれなかった世界を見せてくれるのです


彼がいない世界は何か荒んでいるのです
そこではジョージの弟は幼少期に亡くなっていました
またお世話になったアルバイト先の店主は子供を毒殺した罪で
刑務所に入っているのです
また母親もジョージを産んでいないので自分のことは知らないのです
当然、自分が住んでいた家に帰ってもそこは空き家でガラーンとして
家族も誰も住んでいません


ジョージが生きている現実の世界では弟は戦争の英雄として帰国し
勲章をもらうほどの人間になっていました
それは幼い時に河に落ちそうになった弟をジョージが必死になって
助けたから今の彼があったのです


またジョージがアルバイト先の薬局で手伝いをしていた時
店主は自分の子供を失った悲しみから気が動転して
薬と毒の処方箋を間違えてしまったのですが
ジョージが配達する寸前に処方箋の間違いに気が付き
子供に渡しませんでした
ジョージが気が付くことによって現実の世界では
店主の店は繁盛し死んでしまったはずの子供も大きく元気に育っていました


自分など何の価値もないと思っていたジョージは
自分のいない世界の様変わりした人間模様を見ることによって
力も才能もないと蔑むことばかりの自分でも
周りの人たちの人生にかけがえのない影響を与えていたことに気が付くのです


誰も住んでいない空き家は彼の心の姿だったのです
ジョージがいなかったら彼の四人の子供たちも生まれることもなく
世界は全く別の世界になっていたからです


自分が愛した人や子供、周りの人たちに対する思いやり
こうした愛の連鎖が社会を造っていることに気が付けば
人を驚かせるような偉大なことをしなくても
ありきたりの日常生活における小さな心掛けが
人の運命に大きな影響を与えていると言うことをこの映画は教えてくれます


医療関係者がコロナ・ウイルスと戦いながら生死をかけて仕事に専念し
物流を維持するために昼夜を問わず働くトラック運転手も
殺菌の為にビルの清掃をする人たちもその人がいなかったら
救われないかもしれない命をみんなで守っているのです


仏教の中に縁覚の思想があります
全ての存在は孤立した存在ではなく
あらゆる存在は他との関係の中にあって
互いに係わり、働き合っているという考えです


一滴の露の中にも宇宙が宿り
一瞬の光の中に永遠が凝縮されているというのです
一杯の水が渇いた体の生命力を蘇らせるように
私たちの一つ一つの行動や考え方は無数の他との関連の中に
在るということです


素晴らしきかな、人生!
誰一人として無価値な人はいないと言うことを
改めて感じさせてくれる映画でした


バスを待ちながら - 

×

非ログインユーザーとして返信する