真のアイデンティティーとは

許しを請う黒人の声を無視して首を膝で押さえつけながら
残虐に窒息死させた白人警察官の無慈悲な映像が世界に衝撃を与えました


黒人に対する一部の冷酷な白人の差別意識は
奴隷制度がなくなった今でもその優越感と驕りは消えないようです


あらゆるところで見ることが出来る対立は
意識的にしろ、無意識的にしろ、人間が自己と自己以外の間に
境界線を引くことから始まります


「あなたは誰ですか」と言われた時、殆どの人は自分の思っている
アイデンティティーに従って例えばこのように答えるでしょう


「自分は白人であり、アメリカ人だ。自分は共和党を支持し、
キリスト教を信じている。自分は某大学を卒業し、IT企業に勤めている等々・・・」


自分のアイデンティティーを確立する場合
誰もが自分と自分でないものとの間に境界線を引きます
そしてその内側を自分のアイデンティティーとして認識します


では統一運動におけるアイデンティティーとは
どこにあるのでしょうか


「韓お母様こそが第二教祖なので自分は独生女論を認めても良い」
「顕進様こそが真の勝利された第四アダムです」
「いやいや享進様こそが第二王様で真の後継者なのです」


独生女も第四アダムも第二王もそこには
自分の信じるアイデンティティーに沿って境界線が引かれ
境界線の内側にある人は同じ考えを共有できる仲間となり
外側に位置する人は自分たちとは違うと言うことになってしまいます


又いろんな意見を聞きすぎて混乱すると自分がどこに境界線を引いたら良いのか
分からなくなってしまうことをアイデンティティーの危機とも言います
こうした線引きを避けるために論争から距離を置く人も含めて
この運動のアイデンティティーとは何かを考える時なのかも知れません


冒頭の殺害されたジョージ・フロイドさんは
黒人であると言うことが彼の人種的アイデンティティーの一つでした
白人から見れば自分たちとは違う肌の色をしているのです
その違いを法や制度で管理し保護してきたのが近代社会ですが
内的な恨みや憎悪による直接的な害となる行動に対して
法律で縛ったとしても心の中にある差別感がなくならない限り
こうした抑圧された情念は機会さえあれば今回のようにいつでも表に出てきます


統一運動の目的は全ての境界線を撤廃するということでした
それが全ての思想を統合する統一原理と言うことの意味でもあるからです


分派問題とは、その統一原理の解釈を巡って争っているのですから
外部から見れば言ってることとやってることが違うと言われるのも当然です


しかしこれが思想の当然の帰結なのです
何故なら思想や哲学はそれぞれの主観による知的解釈だからです


では人間は全てを統合するアイデンティティーを持つことが出来るのでしょうか


文先生はことあるごとに真の愛を強調しました
神さえも「真の愛の前には屈服する」という極端な表現さえしています
それは「真の愛」だけが境界線を切り崩す秘密だったからなのでしょう


文師は愛は内側も外側も境界線もなく全宇宙さえ抱合できるといいます
その境界線のない意識に目覚めれば存在は「一つの調和した全体」となるからです


東洋ではこの意識状態を不二一元と呼びました
聖人や聖者と呼ばれる人たちはこの一元の意識の中に
祈りや瞑想を通して没入することによって
個と全体とが一つであることを悟ります


鏡が森羅万象をあるがままに映すことが出来るのは
自分と他者を分ける境界線がないからです
即ち自分のアイデンティティーを知的に縛る知的な「我」ないからです
「かがみ」の真ん中の「が」を取れば「かみ」のように澄み切った世界が
あるがままに映し出されるというのが「かがみ」の象徴的意味だと言います


外界との接点である皮膚が内と外との境界線のように見えますが
外の空間があるから物体としての身体が自由に動くとも考えられます


空間と身体は無と有と言う位相は違っていても分離できない一体のものになるからです
空気も外にあると同時に呼吸によって内にも入ってきます
血液は毎秒休むことなく酸素を人体の細胞に送っているのです


愛はあなたの中にあると同時に
あなたも愛の中に包まれていると考えれば愛には境界線がないことになります


キリスト教徒も仏教徒もあらゆる宗教者が到達しようとした
慈悲や愛の心は全体と個を遮る境界線がないので
誰もが共有できると言うことなのでしょう


超国家とは国の境界線を越えること
超宗教とは宗教の枠を超えること
境界線や枠はそれぞれの主義や思想に囚われている人のことです
そこでは自分の信じる信条・主義・主張が跋扈するだけで
愛や許し、寛容と言う言葉は二義的になってしまいます


文師が事あるごとに強調した真の愛の必要性は
それだけが知的真理や正義を超えて全てを統合できる
アイデンティティーだからではないのでしょうか

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