天使とメッセージ物質

生命は一つの受精卵から始まり細胞分裂によって
無数の精巧なネットワークを持つ人体が構成されていきます
人体は遺伝子の持つ暗号に沿って各臓器が造られ
その際に、細胞の全てにあると言われるメッセージ物質が
その人体の臓器を形成する主要な役割を果たします


人体生成の観点から考えればこのメッセージ物質が
天使の役割なのかもしれません


一般に考える天使は人間のような形態をして
神の創造の技を賛美するようなイメージを持つのでしょうが
具体的な人体形成の観点から見ればメッセージ物質を
天使の一つの機能として捉える方がより具体的です


事実この物質の持つ志向性がなければ人体は構成されません


現代の生命科学では細胞が持つメッセージがどこから来るのか
詳細はわかっていません


人体の持つ大きな特色は細胞分裂によって造られた体を守ろうとする動きです
細胞が存続するためにはこの生命を維持しようとする本能的な
無意識の動きが不可欠となります


生命本能には食欲、睡眠欲、生命を継承しようとする性への欲求等があります
そしてその欲望を満たす為の中心的働きをしているのが自我です
問題はこの自我が人体を保持しようとする本能をどのように主管できるのかが
原理でいう人間の責任分担でもありました


「神も創造前は自己中心的だった」というみ言があります
動物はほとんどが自己中心的です。猛獣は容赦なく生き延びるために
他の動物を殺してその肉を食します


赤ん坊は誰よりも自己中心的です
と言うより本能がそのようになっているからです
肉のカラダは他の生命体を食することによってしか
生きることが出来ないのです


この本能と堕落性が混同して理解されると欲望否定の宗教倫理が正当化されてしまいます
神が与えた欲望があたかも悪の原因であるかのように思ってしまうのです


動物と人間の違いは人間には自我があるからです
神は自己を意識化できるこの「私」を通してご自身を顕そうとしたのです


食欲も睡眠欲も肉体の成長には絶対に不可欠な欲望です
そしてその中でも性の欲求は血統と命に繋がる中心的な欲望なのです


文師は生殖器は自分のものではなく対象のものだと語ります
その論理でいえば性の本能的欲望も自分の為にあるのではなく
相手の為にあると言うことになります


血統転換に男女の性が介在するのはこの性への欲望を
自分のために満たしたので、そのことを自己中心性と呼び堕落と言ったのでしょう
もっと具体的に言えば性的快楽は自分が先に喜ぶためにあるのではなく
相対を愛して喜ばせることが先だと言うことです


メッセージ物質は肉体の存続の為に働きます
天使長とはこの肉体の自己中心的な喜びの感性を
自己から他者に向けることが出来なかったことを
比喩した表現なのかもしれません


エバがとって食べたその後アダムに与えたと聖書に書かれていますが
天使長がとって食べたとはどこにも書かれていません
自分で自分の何を食べたかと言えば
愛の根拠となる性の欲望をエバは自分のものにしたということです
堕落後エバはこの欲望の根拠はアダムの為にあったと言うことに気が付いたのです


神の宇宙創造の始まりは霊界からだといわれます
霊界で万物のイメージが出来上がり
鉱物、植物、動物と言う創造の順番がありました
その創造の序列が現象化すると正分合と言う時間の流れが生じます
それが進化のプロセスのことです
人間に限って言えば原始人のイメージから始まって現代人に
至る進化の過程のことです
アダムとエバの前には原人がいたことを示唆します


その原人のことを霊的に見れば天使的レベルと言ったのかもしれません
「神は我々に似せて人を造った」
僕のレベルの心的状態とは肉の本能を中心として
繁殖していた原人のことを指すのかも知れません


まさに一種の動物的レベルです
それを宗教的に言えば多神教の豊饒神の世界ではないのでしょうか
そこでは愛の原理となる一対の関係ではない
多産系の生命繁殖を中心とした宗教世界が集落を形成していたのでしょう


神は或る時、最後の神の創造目的であるご自身の実体化の役事をされた話が
エデンの園の神話として表現されているのです
それは宗教学的に言えば多神教に対する一神教の始まりです


アダムとエバに対して神は初めて肉の本能的繁殖から
愛による霊性を中心とした血統の維持を定めたと見るのです
心理学的に言えば肉体の本能的自己中心性から霊性による
他者性への愛の本質的転換のことです


愛の本質は自己中心性を越えなければなりませんから
他者を自分以上に大切に思える為にも
愛は唯一の相対から来ると言うことを実現させたかったのです


その一対の愛の流れを通して神は人間の中に定着しようとされたことが
創造の目的だったと言うのが文先生の原理観です


思春期とは肉体の本能が異性に目覚める年齢のことを指します
この期間に霊的な初愛の情が中心となって
「為に生きる」神の愛のかたちが男女の中に定着しなければならなかったのでしょう


それは自分以上に相手を大切にする
相手の中に愛の根拠を置くと言うことです
自己中心ではなく対象中心の愛の完成です


愛の喜びは自分の為ではなく相手の為であり
肉の欲望も自分の為ではなく相手の為
自分が喜ぶのではなく喜びは相手の為
全ての肉の欲求に対して他者を中心とした
愛の原則を立たせることだったのです


この原則が三代において四位基台を完成したときに
12数の完成となるが故に13代目から
アダム以前の原人の祝福が可能となったのかも知れません
これが天使長を中心とした天使圏の祝福だったのだともいえます


晩年にはこういうみ言も残っています


「神はアダムとエバを祝福した後、13代目に神の弟である天使を
祝福しようと思っていた


蛇とは肉体においてはメッセージ物質としての生殖器官のことを指したのでしょう
その本質は性的欲求のことでした


天使には本能を司る天使
人格霊としての大天使
運動霊としての権天使
他に能天使
力天使
主天使
座天使
智天使
織天使としての聖霊があるとされていますが
これらは中世における天使論であって
現代の科学的な知性では実証できていません


しかし考えてみれば堕落論に記載されている天使はルーシェルだけであって
その天使の誘惑に堕ちて人類が悲惨な状態になり苦しみ続けている事実に対して
信仰者は一言サタンの所為だというだけで悪の本体である天使長ルーシェルが
今どのように人間に相対しているのかは未だよくわかっていないのです


もっと言えば天使界がどのような構造になっているのかも知らずに
神話を信じているわけですから信仰者が一旦信じたことを変えることは
実に難しいということにもなります
信仰とは知ることではなく信じることが優先されるからです


知性と認識の次元がより明晰になってきた現代人には
より科学的な天使の概念を追求してもらいたいものです

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