南北統一の問題点 その1

良くも悪くも国家の安全は軍事力で守られています
誰もが平和を願いながらもイデオロギーの相違や
宗教、民族の違い等で闘いや戦争が止むときはありませんでした


軍事分析で知られるストックホルム国際平和研究所の報告によれば
2017年の世界の軍事費は1兆7390億ドル(約200兆円)
冷戦終結後では最高だったと報告しています
その大きな要因にアジアにおける軍拡が原因だったと分析しています


各地でテロや戦争があっても世界大戦にまで至らないのは
確かに大量破壊兵器である核の相互保有による
パワーバランスがあるからだという説は正しく
北朝鮮が核兵器を必死になって製造した理由は
その意味では分からないでもありません


だからと言って世界中が核保有に走ったら
人類はまさに自滅への道を歩むことになってしまいます
だからこそ歯止めの為の核廃絶交渉が今韓半島を巡って
米朝間でなされているのでしょう


ケネディ大統領は国連演説で50年以上も前にその危険性を指摘しています
「地球の全ての住人は、
いずれこの星が居住に適さなくなってしまう可能性に思いを馳せるべきであろう。
老若男女あらゆる人が、核と言うダモクレスの剣の下で暮らしている。
世にも細い糸でつるされたその剣は事故か誤算か狂気により
いつ切れても不思議はないのだ」


冷戦終結といえども依然として世界は二つの陣営に分かれています


日本の目と鼻の先にある朝鮮半島は
冷戦の最後の二つの陣営の分断線だと言われ続けてきました


そしてこの38度線が今、南北融和と統一に向けて
具体的に動き始めているのですが
問題は北朝鮮が共産主義的な独裁国家であり
韓国はその体制に対峙する民主主義の国であるということです


このイデオロギーの違いを両国は
どのようにして埋めようとしているのでしょうか?


シナリオの一つに中国と香港のような
一国二制度の体制も考えているようですが
主体思想を中心とする北朝鮮と民主主義国家の融和は
最終的には力関係によって吸収されていくことは
中国の例を見るまでもないことです


どちらにしても容易なことではありません


また日本の安全保障の問題においても
より複雑な状況が考えられます
統一朝鮮になった場合、当然のことながら
南北双方に向けられていたミサイルはどこか別の方向に向けられるからです


国連の安全保障理事会で決定した経済封鎖の解除は
北朝鮮の核兵器の廃絶が絶対条件になっています
ところが韓国の文大統領はしきりに経済緩和処置を訴えて
あたかも北のスポークスマンのような態度をとりながら
世界各国にその緩和政策を支持するよう要請しているのです


仮にミサイルや核が撤去されない状態で南北統一が実現された場合
統一朝鮮の核はどこに向けられるのでしょうか?
仮想敵国として中国に向くのでしょうか?
或いはロシアに向けるのでしょうか?
そして日本には向けられないという保証はあるのでしょうか?


昨年、南北が軍事衝突寸前にまで緊張した時
韓国は何を思ったのか竹島(独島)を守るための軍事訓練をしました
南北の緊張関係の中でこうした不可解な動きは
通常の同盟関係では考えられません


そのことによって韓国は日本も既に仮想敵国のひとつであると
証明したことになってしまいました


また現在の日韓の対立を見るにつけ
民族の血のつながりを優先する朝鮮民族にとっては
日本に対する独立運動を建国の始まりとする考えは
まさに恰好な南北融和の切り札になるのです


平和や軍事力のない世界は誰もが願うものです
しかし願望がその通りにいかなかったのが歴史の悲しい実態でした


何十年にもわたって執拗に日本に対して行ってきた反日教育は
今では子供たちの中にさえしっかりと根付いてしまったかのようです
日本を敵対視することによって南北の民族意識を高揚させ
極東に新たな核兵器を持った軍事大国が出現するか否か
その分岐点にあるのが今の北東アジアの現状なのです


その意味では韓国との軋轢を対岸の火として見る時期は
終わったのかも知れません


日本は文大統領の今後の動きを注視しながら
南北統一が自由と民主主義の理念のもとになされるよう
米国や西洋諸国との連携を一層強めることが重要でしょう


続く

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